インボイス制度は絵画買取にも影響するのか?

日本の税制度に新たに導入されたインボイス制度が、さまざまな業界に波紋を広げています。絵画買取市場も例外ではありません。

この記事では、インボイス制度の基本と、それが個人や事業者の絵画取引に与える影響を解説します。

そもそもインボイス制度とは

インボイス制度は、2023年10月から施行された消費税の新しい課税方式です。この制度では、課税事業者は取引ごとに特定の情報を記載した請求書(インボイス)を保存することが義務付けられています。

重要なのは、この請求書には「適格請求書発行事業者」の認定番号が記載されていなければならないということ。これまで、前々年度の課税売上高が1,000万円以下の事業者、あるいは前前年度の記録がない、起業したばかりの事業者は、免税事業者として扱われてきました。

しかし、免税事業者は適格請求書、つまりインボイス請求書を発行できません。発行するためには、年収が1,000万に満たなくとも適格請求書発行事業者=課税事業者として登録する必要があります。

登録をするかどうかは事業者の自由意志ですが、免税事業者のままでいると、取引先の課税事業者はその分の消費税を仕入れ控除できません。つまり、取引先に消費税の支払いを丸投げすることになります。免税事業者にとって、非課税となる消費税は暗黙の収入源でしたが、それが失われることで難しい選択を迫られているのが現状です。

また、これまで免税事業者として一括りだったものが、自由意志によって振り分けられることになるため、請求書を受け取る側の事務作業の負担も増大。ただでさえ複雑な対応を迫られていることもあって、本業の機会喪失につながっているという負の側面もあります。

絵画買取への影響

絵画買取は、買取業者にとっては仕入れです。一見すると、インボイス制度は絵画買取業界に大きな影響を与えるように思えます。ただ、絵画買取のように、芸術作品や骨董品を扱う事業者には、古物商特例という特例が用意されています。そのため、その他の業界ほど大きな影響はありません。

買取を依頼する個人の負担もほとんどなく、あるとすれば古物商特例に設けられた条件をクリアするためのチェック項目が、取引書類に増えるくらいでしょう

古物商特例について

インボイス制度の下での古物商特例は、絵画を含む古物の取引において重要なポイントです。古物商とは、中古品や古い物品を取り扱う事業者のことで、絵画買取業者もこのカテゴリーに含まれます。

古物商特例とは、古物の取引において一定の条件を満たす場合、消費税の計算方法や申告において特別な扱いがなされるというものです。具体的には、以下のような条件です。

  • 古物商又は質屋であること
  • 適格請求書発行事業者でない者から仕入れた古物・質物であること
  • 仕入れた古物・質物が、当該古物商・質屋にとって棚卸資産(消耗品を除く)であること
  • 一定の事項が記載された帳簿を保存すること

引用元:インボイス制度 | 警察庁Webサイト

絵画買取業者の場合、古物商特例を適用することで、絵画の買取価格や販売価格の設定において、より実情に合った消費税の計算が可能になります。ただし、この特例を利用するためには、古物商としての適切な登録と、取引に関する正確な記録の保持が必要です。

インボイス制度導入に伴い、古物商特例の適用に関するルールも変更される可能性があります。そのため、絵画買取業者は、最新の税制改正や規制の動向に注意を払い、適切に対応する必要があります。

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