用語集1 – 絵画の芸術様式

絵画の芸術様式に関して、主要な時代を追って解説してみたいと思います。

ビザンチン(4-15世紀)

東ローマ帝国で発展した様式で、宗教画を中心に独特の表現様式を確立しました。

金箔を贅沢に使用したり、人物は正面を向いて描かれたりなど、装飾的かつ平面的な表現が特徴です。これは、遠近法や立体感より、神聖さや威厳を表現することを重視したためと考えられています。

また、モザイク画や聖像画(イコン)が代表的で、人物の表情は厳かなものが多いです。

現代では特に聖像画が収集家から高い評価を受けており、保存状態の良い絵画は特に高額で取引されています。

ロマネスク(11-12世紀)

中世ヨーロッパの修道院や教会を中心に発展した様式です。フレスコ画や写本装飾が主流で、人物や動物のモチーフは単純化され、強い輪郭線で縁取られています。

この時代の構図も平面的で、象徴的な表現が多く見られます。人物の動きはどことなくぎこちないものが多いですが、そこには中世特有の神秘的な雰囲気があります。

また、建築との一体性が重視され、壁画は建築空間の一部として機能するようになりました。現存する絵画作品は比較的少なく、その希少性から美術史的価値が高く評価されています。

ルネサンス(14-16世紀)

古代ギリシャ・ローマの文化復興を目指した革新的な時代です。

遠近法の確立や解剖学の研究により、より自然で写実的な表現が可能になりました。宗教画に加えて、肖像画や神話画も多く描かれるようになり、神話の世界観から人間中心の世界観にモチーフも広がりました。

この時代は、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロなど、巨匠たちが多数輩出されたことでも知られています。技術的完成度の高さと人文主義的な精神性から、現代で最も評価の高い美術様式の一つとされています。

バロック(17-18世紀)

劇的な明暗対比と、豪華絢爛な表現が特徴的な様式です。対抗宗教改革の影響で感情表現が豊かになり、動的で壮大な構図が好まれる時代でした。

天井画では遠近法を駆使した騙し絵的な手法が多用され、空間全体を劇場的な演出で満たす、現代のインスタレーションにも通じる表現も見られるようになりました。

ルーベンスやレンブラントなどの画家が活躍し、宗教画だけでなく、風俗画や静物画なども人気を集めました。現代では特に静物画や肖像画の需要が高く、保存状態の良い絵画はやはり高額で取引されています。

ロココ(18世紀)

バロックの重厚さから一転、優美で軽やかな表現を特徴とする様式です。

貴族の私的な空間を飾るため、神話的な主題や恋愛場面、牧歌的な風景が好まれました。パステルカラーを基調とし、曲線的で装飾的な要素が多用されています。

フラゴナールやヴァトーなどの画家が、優雅で官能的な作品を多く残しました。現代では、その装飾性と洗練された技巧から、インテリアとしての需要も高く、特に小型の絵画が人気です。

江戸時代(1603-1867)

鎖国政策下で独自の発展を遂げた日本の芸術様式です。狩野派による障壁画から、浮世絵、南画まで、多様な絵画形式が展開されました。

特に浮世絵は、庶民の生活や歌舞伎役者、風景などを題材に、版画技術の向上とともに大きく発展しました。葛飾北斎や歌川広重などの作品は、後にヨーロッパの印象派にも影響を与えています。

現代では、特に浮世絵の評価が高く、版画の刷りの状態や色の保存状態によって価格が大きく変動します。

※当サイトでは、専門知識に長けたサイト管理者の監修のもと、編集部内で独自基準による徹底的なリサーチを行い、客観的・適正な情報発信を行っております。